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2016年1月13日水曜日

Wire ギターアンプの配線材について

ギターアンプの内部配線に使用する配線材 ( Wire ) について記載します。
布巻き単芯線にすると音の輪郭がくっきりするとか、ベルデン線は良い音がするとか、様々なうんちくがあちらこちらで出います。それは置いておいて、ここではもっとベーシックな話をします。配線材の太さとその選び方についてです。

配線材の太さをあらわす単位として AWG が良く使われます。AWG とは American Wire Gauge の略です。AWG22 のように AWG の後ろに2桁の数字をくっつけて、配線材の芯線の太さをあらわします。皮膜の太さは含んでおらず、芯線すなはち導線( Conductor ) の太さをあらわしています。

下に表を載せておきます。
この表の見方は左端に AWG, 次の列にその AWG のときの芯線の直径、芯線の断面積、面積倍数 (AWG22を 1 としたとき、その他のAWG は AWG22 の何倍の断面積をもっているか) 、許容電流(単位は A アンペア) です。

日本の部品屋さんでは AWG を使わず 「0.325 スケ」というようにスケという言葉を使われる場合があります。そのときスケとは Square mm のことです。断面積で線の太さをあらわしています。
AWG の太さ
【線材の選択その1】許容電流
上の表の右端のカラムの許容電流とは、その線に流すことのできる電流の最大値です。言い方を換えると「この許容電流以下の電流までなら芯線は耐えられますよ」ということです。許容電流以上の電流が流れる場所に使うと、芯線が発熱し、高音になり、最後は皮膜を燃やしたり溶かしたりした後に切れます。

皮膜がテフロンの線材は高熱にも耐えられ、高電圧にも耐えられます。だからといって芯線の太さを無視して、高い電流を流すと中の芯線は切れてしまいます。つまり、電圧を気にするときは皮膜の絶縁性能が問題となりますが、電流を気にかけるときは芯線の太さに注目する必要があるのです。

ギターアンプの線材選びのまず第一歩は大きな電流が流れるところにそれ相応の太さの芯線の配線材を使うということです。
では大きな電流の流れる場所とは、それはヒーター配線です。ヒーターとは文字通り熱を発生させる部分です。真空管はどれもヒーター配線から供給される 6.3V の電圧を使い、真空管内部のフィラメントを熱してガラス管の内部で電子が飛びやすい状況を作り出しています。
6.3V という低い電圧を使って熱するため電流はたくさん必要となります。
真空管のヒーターが消費する電流
真空管一本あたりで消費する電流の値を列挙したものが上の表です。
この図を見ながら計算をしてみましょう。例えばあなたがデラックスリバーブを作ろうと考えたとします。真空管のヒーター配線に使う線材の太さはどれくらいにすべきでしょうか。
デラリバはパワーチューブ 6V6GTを2本使います。またプリチューブ を 6本使います (12AX7 x4, 12AT7 x2) 
ヒーター配線に流れる電流 = 450mA x2 + 300mA x6 = 2700mA = 2.7A
全部で 2.7A の電流がヒーター配線を流れます。

そこで一番はじめの表を見ます。 AWG 22 の線の許容電流は 2.4A しかありません。これでは細すぎます。AWG20 は 3.7Aまで流せます。約1A の余裕があります。しかし、万一どれかの真空管の内部でショート( 短絡故障)の故障が起こり運悪くヒーターがショートしたら、もちろん安全装置としてのヒューズが飛びますがヒーター配線に1A の余裕しかないとヒューズが飛ぶまでのわずかな時間にヒーター配線が燃えてしまうかもしれません。本来ならヒューズ交換と壊れた真空管交換ですませられるのに、ヒーター配線のやり直しもしないといけなくなってしまうかもしれません。実際のブラックフェースでは さらに余裕をとって AWG 18 がヒーター配線材として使われています。 

ヒーター配線が細すぎた事例
上の写真は過去に私のところへ修理でやってきた某メーカーのアンプのヒーター線です。被服が完全に燃えてなくなっています。
この線の太さは AWG 24 しかありませんでした。このメーカーは自社生産しておらず、アジアの某国に生産を委託しています。オールチューブであるものの、とても安い値段で売られています。
複数の真空管を並列でつないだヒーター配線に AWG24 を選択するなどありえない話です。恐らく生産をしていたアジアの会社はパソコンやその他電子機器などトランジスター回路の経験はあっても、真空管回路についてはど素人なのかな。その辺のところはよくわかりません。

こんな写真を見せられると、「おおそうか、太けりゃいいのか」といってなんでもかんでも太い配線材にする人が出てくるかもしれません。事実そういう人がいらっしゃいました。
全てAWG18 を使いハンダ不良をおこしていたアンプ
上の写真はチャンプです。あるお方がご自分で配線材全てと抵抗・コンデンサー全てをオーバーホールなさったものです。まずはじめに、私のところにメールと電話がきました。「自分で全部するからわからないところを教えてほしい」と色々質問攻めなさいました。忙しかったものの真摯にすべてのご質問に無料でお応えしました。しばらくたってから「完成したものの音が出ない」といってアンプは私のところに送られてきました。
それが上の写真です。問題は緑色の線です。本来はヒーター配線向けの AWG18 のCloth wire です。芯線は撚り線ではなく単芯線です。直径1mmの単芯線はハリガネのように固く、ハンダ付けする際に芯線の温度が上がりにくくイモハンダとなりやすい欠点があります。
真空管のソケットへのハンダ付けは比較的上手くいきます。芯線をソケットの端子にカラメてからハンダ付けすれば温度の問題は起こりにくい。問題は回路ボードのハトメ部分でのハンダ付けでした。ハトメの穴には抵抗やコンデンサーの端子が入ります。その穴に AWG 18 の単芯線がきちっと入れられておらず、上に載せた状態でハンダされていました。そうするとハトメ全体にコテ先が当たらずハンダの温度が不均一なまま固まっていました。
お使いになったハンダコテも温度調整できるタイプではなく、またコテ先もハトメに使う先端が太いものではなく、基板用のとがったものをお使いだったようです。

オリジナルのチャンプのヒーター以外の配線材はAWG22 もしくは AWG20 が使われています。
AWG22 は信号線、いわゆるギター信号が通過する部分に使われます。電流という観点ではアンプの中で最も少ない電流が流れます。
AWG20 は +B (プラス・ビー) といって真空管のプレート抵抗に電源を供給する配線です。
ヒーターの次に多くの電流が流れます。とはいっても最大で 200mAほどです。 

細すぎてもだめ、だからといって太けりゃいいのではなく、適材適所に線材の芯線の太さは選ぶ必要があるのです。















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