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ギャンプスのロゴです。

2015年10月29日木曜日

Twin Reverb 135W のオーバーホール その2. フットスイッチの修復

受け入れ検査で見つけたフットスイッチの不具合の修復を行ないました。
こういう作業は本体の作業の後に行なうと、面倒になることが多く、先に片付けるようにしています。
本体の RCA ジャックに刺さったままの切れたケーブル
切断された状態で本体の RCA ジャックにつながれたままのケーブルを外しました。
固くて手で引き抜こうとしただけではびくともしません。RCA ジャックから抜けないからケーブルを途中で切断したということでしょうね。プライアーを使うとなんとか引き抜くことができました。
プライアーを使い RCA プラグを引き抜いているところ
 引き抜いた RCA プラグの先端を指で触れると粘着質のネトネトとしたものが指にまとわりつきました。恐らく、この粘着物質のおかげで抜けにくくなっていました。接点復活材の付け過ぎの状態で放置された上に、劣化して硬化したものではないかと推測します。
RCA 端子は今から新しくします。しかし、受け側 ( female ) の RCA ジャックは、後で分解してクリーニングする必要が出てきました。このアンプ触れば触るほど潜在不具合が顕在化してきます。
RCA プラグの先端に触れると指先に粘着物質が付着
いよいよフットスイッチの修復です。
切断された部分に別のシールドケーブルがハンダ付けされています。その先端は RCA 端子ではなくフォン端子に変更されています。
フットスイッチのスイッチ部分は残し、ケーブルと端子は新しいものにします。
切断部分に別ケーブルが付けられたフットスイッチ
まずフットスイッチの裏蓋プラスチックを外します
裏蓋を外したところ
ひっくり返すと写真のように2芯のシールドケーブルの各々のホットが Carling のスイッチにつながれています。

フットスイッチの配線
古いケーブルをスイッチからはずしました。
新しいケーブルには Mogami の2芯シールドを使います。
RCA 端子は国産の汎用品を使い新しくします。

古いケーブル配線を外したフットスイッチと新しいケーブルとRCA 端子
Mogami シールドを配線しました。

新しいケーブルをスイッチに配線
RCA 端子を取りつけてフットスイッチの修復の完成です。

ラベルも新しくしました。足元に置いたときに、左右のどちらが Vibrato で Reverb なのかを瞬時に判断できる必要があります。ラベルの文字を読んでいては、間に合わないことが多い。そのため、ラベルは文字に加え色分けをし、ラベルの方向も変えて、どちらのスイッチが踏みたい方なのかを感覚で分かるようにしておきます。ライブをするときの一工夫です。
バーガンディー色が Vibrato で、グリーンが Reverb です。 

修復後のフットスイッチ
明日からは本体の作業にようやく取りかかります。
ギャンプスのオーバーホールは一台あたり約一ヶ月かかります。その理由が少しでもお分かりいただければと思い、ブログ更新しています。




2015年10月26日月曜日

Twin Reverb 135W のオーバーホール その1. 受け入れ検査

2015年10月26日記載
Twin reverb 135W のオーバーホールの仕事にとりかかりました。
お客さまは富山県にお住まいの D 様。
わざわざ富山県から滋賀県まで車で運んでお持ち込みくださいました。
Twin Reverb 135W

【過去の修理履歴】
過去に修理に出されたそうです。しかし、調子は悪く、Normal チャンネルだけが鳴り、Vibrato チャンネルはならずの状態だそうです。

【他店でスピーカー故障の診断】
楽器屋さんに見せると、スピーカーも悪くなっており、メーカーに送る必要があるとのこと。
とはいってもシルバーフェースを Fender に送り返して、故障修理なんてしてもらえるはずもなく、なんとかしてほしいというのがご要望です。

【受け入れ検査 Part 1. サウンドテスト】
早速、お客さまと一緒に試奏テストをしました。結果は以下のとおりでした。

① 音圧が不安定です。フラフラとした感じです。 ×
② 音質に色気が全くない。×
③ キャビネットの上部をコツンと叩くとバリッバリッという大きなノイズ発生×
④ まがいなりにも Vibrato チャンネルから音は出ました。△
⑤ サウンドはいまいちなながらリバーブは鳴りました。△

Good News
-  リバーブ・パンとリバーブ・トランスは壊れておらず使えます。
- 音が出たことから、トランス PT, CT, OT, は使える可能性大。

【受け入れ検査 Part 2. Visual Inspection】
今度はアンプの中を見て不具合部分の特定を行います。

(A) フットスイッチ Broken ×
フットスイッチが写真のように一旦切断され、その部分にフォンジャックの付いたシールドが2本つぎ足されています。
Foot Switch
アンプ側のRCA 端子につながる部分は途中で切断されています。(下の写真)

Foot Switch 接続部分

(B) フィルター・キャップからの液漏れ ×
アンプのシャーシーを取り外し、フィルターキャップ部を見てみました。
Cap Pan と呼ばれる、カバーを取り外すとカバーに黄色い染みがあります。
Cap Pan removing 
 Cap pan の染みを拡大したものが下の写真
Stain on the cap pan
 Cap Pan の染みの直下にあるアルミ電解コンデンサー ( Electrolytic capacitor ) から液漏れした痕跡を確認しました。アルミ電解コンデンサーは内部に溶液が封入されています。劣化して古くなり、使い物にならなくなると液が吹きこぼれ、固まります。古いアンプによく起こる症状です。
アルミ電解コンデンサーの寿命がとっくに尽きています。
アンプ内の全てのアルミ電解コンデンサーは液漏れの有無に関係なく寿命がきています。
アルミ電解コンデンサーの液漏れ
 下の写真はこのアンプの整流回路です。ダイオードx4本とセラミックコンデンー x4個で正方形に配線されています。その横にセメント抵抗があります。
PT ( 電源トランス) から送られる交流電圧を整流し、 500V の直流電圧を作り出し、アルミ電解コンデンサーに供給します。そうです、135W のツインリバーブのプレート電圧は500V と高電圧です。
この部分も確実に劣化しています。こちらが先に劣化したかコンデンサーが先かはあまり重要ではなく、両方共に交換しないと、良い音質には戻りません。
Rectifier
(C) パワーチューブ 6L6GC の状態
まがいなりにも音が出たことから、パワーチューブが完全に壊れているわけではありません。しかし、劣化は甚だしい。観察しますと、4本ある 6L6GC のうち3本はオリジナル。一本だけ交換されています。(V9)
Power Tubes 6L6GC, V9 was replaced in the past.
下の写真は左がオリジナルの6L6GC、右が交換されていた 6L6GC です。SOVTEK の5881 WXTが一本だけ交換されています。お客さまがおっしゃっていた「過去に修理に出した」ときの修理がこれです。 Wrong !!! もしもパワーチューブ交換が必要であったのであれば、たとえ壊れているものが一本だとしても、4本同時に交換するのが基本です。しかも、肝心のアルミ電解コンデンサーや整流回路にはいっさい手がつけられていません。
お客さまのおっしゃっている「修理に出したのに調子が悪い」はずです。

昔CM で「くさい臭いは元から断たなきゃダメ」というキャッチフレーズがありました。
アンプの故障も真の原因を除去しなきゃダメなんです。

Left : Original 6L6GC, Right: SOVTEK 5881 WXT
(D) プリ・チューブ 12AX7, 12AT7 の状態
  続いてプリチューブを見てみました。
Preamp tubes 12AX7, 12AT7
 V2 ポジションの 12AX7 の頭の部分の内部塗装がはがれていると共にガラス管が白く変色しています。下の写真の左から2番目の12AX7。Vibrato チャンネルのプリアンプを担当する管です。真空管が壊れていく過程でこのような状態になることがあります。
特に白く変色する場合は、真空管に配線され、動作点を決めている3本の抵抗が劣化している兆候です。抵抗が劣化してきており、さらに真空管の劣化を加速している途中ということです。

お客さまのおっしゃっていた「 Vibrato チャンネルの音が出ない」という症状と、こちらで受け入れテストしたときに「 Vibrato チャンネルから音がでた」という現象は一見相反するように見えます。しかし、実は完全に符合します。
回路内の抵抗が劣化してきますと、完全に内部切断が起こるまでに、温度に敏感になります。
パワー・オン直後はなんとか繋がっているものの、内部温度が上昇すると断線するというものです。
パワーオン直後は鳴っていて、しばらくすると鳴らなくなる。またしばらくしてパワーオンすると鳴り出す。という現象です。 Intermittent Open Failure of plate resistor です。
Damaged 12AX7, V2 position
上記のことからアルミ電解コンデンサー、整流回路だけでなく、アンプの回路部品のほとんどが劣化していることを示します。

ここまでの受け入れ検査を間近でご覧になり、
ギャンプスのオーバーホールを実施するようにお客さまからご依頼されました。

(E) スピーカーの検査

お客さまは他店で「スピーカーが壊れている」と言われたそうです。
しかし、サウンドチェックでは回路の不具合は聴こえたものの、スピーカー本体の壊れたような音はしませんでした。それでスピーカーを検査しました。
下にの写真は右側のスピーカーのボイスコイルの抵抗値測定です。
抵抗値 6.7Ωを計測しました。ボイス・コイルには異常はなく健全です。
Resistance Check of the right speaker
同様に左のスピーカーの抵抗値も6.5Ωで問題はありません。
ご参考までに、インピーダンス 8Ωのスピーカーの抵抗値は5Ωから7Ωの間が正常です。
インピーダンスは交流に対しての抵抗で直流抵抗の値よりも少し低めにでるのが正しいのです。

Resistance check of the left speaker
では、コーン紙に問題があるのかと思いきや、コーン紙もまったく問題ありません。従いまして、「スピーカーは壊れておらず、スピーカー交換は不要」との診断をここで下します。
Speaker's surface is all good
以後、作業内容を逐次掲載していきます。







 



   



2015年10月22日木曜日

GAMPS Browny G3 スペック

ギャンプスのオリジナルアンプ Browny G3 のスペックは以下のとおりです。

アンプ名 : Browny G3
回路方式:  オールチューブ、ハンドワイアード
出  力  : 約 20 W
真空管   : 6V6GT x2, 12AX7 x 2
スピーカー: Eminence Legend 1028K
スピーカーケーブル : AIW 社製 WE 復刻版
アッテネーター内臓 : トグルスイッチ切り替え
キャビネット: US パイン 16 5/8" x 8" x 8 3/4"  10 inch hole

コントロールパネル 左から
・ 入力 x2 「高」「低」
・ ボリューム 「 量 」
・ トーン・コントロール 「 質 」
・ スタンバイ・スイッチ「待機」
・ 電源スイッチ「電源」
・ パイロットランプ(色グリーン)

当アンプの製作工程はブログ内にあります。

サウンドについても製作工程の一番最後に記載しています。

YouTube にサウンドがアップされています。


演奏してくださいましたのは田井泰弘さんです。http://taimusicworkshop.strikingly.com/


フロントビュー
フロント・ビュー
リアビュー
リア・ビュー
コントロールパネル
コントロールパネル






2015年10月21日水曜日

GAMPS Browny G3 製作工程

【2015 8/30】
夏休みとはなんにもせずに休むもの。でも今年は「なんにもせずに」というのがもったいなくて、GAMPS のオリジナル・アンプの製作をして過ごしました。当初の予定では、今月末に完成するはずが、諸般の事情で違う仕事をせざるをえなくなり、完成せず、デラリバ・リイシューのハンドワイアードのお仕事の時期となってしまいました。いやー、でも、楽しかった。いちから無垢のアルミシャーシーの穴あけをし、部品レイアウトを考え、製作していくのは何よりものレジャーです。最高の夏休みでした。



アンプの回路図はあくまで論理的な図面です。回路図を実際のハードウェアとして作りこむ過程がアンプの仕上がり、音にとても影響します。
1. トランスの位置関係がまずいと発振したりノイズが大きくなったりします。
2. 真空管のソケット間の間隔は一定の距離を保たないと真空管どうしの熱で
相手の劣化を早めます。もちろん向きも大切でこれを間違うと発振します。
3. 回路ボード上に取り付ける抵抗・コンデンサーの向きと間隔も音質・発振・ノイズに影響します。
4. スイッチやポットの位置も操作性を考えつつ、発振やノイズの出にくい位置に定める必要があります。

これらを考えながら具現化していくことにやりがいがあります。

今回のテーマは
(a) 持ち運びしやすいこと、なるべく小柄で軽く作る。
  そのためシャーシーは鉄ではなくアルミを使います。
  反面、アルミシャーシーはハムノイズが出やすく、
  工夫が必要。キーワードは Grounding。
  グラウンド・ループをなくし、接続は確実に。
(b) 6V6 x2 を使ったプッシュプルパワーアンプで出力25W
  ライブで重宝する音圧をもつこと。
(c) 回路はブラウンフェースの 6G3 デラックスをベースにしつつも、
  ギャンプス・オリジナル回路に仕上げる
(d) コントロールは清く正しく Volume x1, Tone x1
(e) 音質はブルースにも合うし、ジャズもできること。
  全くのClone にしてしまうと歪みが早く出てしまい、
  ジャズには使えない。
   ヘッドルームを高めにとるオリジナル回路となります。

キャビネットは Weber の 5F2 をオーダー
スピーカーは 10 インチ x1 仕様、 Eminence の Legend 1028Kを採用

今日の時点で、回路ボードへの部品組み込みが終わらない状態で Suspend となりました。
最後の写真 ……カバーをして Resume できるまで待機です。

【2015 10/11】 Resumed
本日から作業を再開しました。
アンプクレイドルにシャーシーを載せました

回路ボードに部品を搭載していきます

12AX7 x 2本、6V6 x 2本の仕様です
【2015 10/12 Updated】

【カップリング・コンデンサーについて】
増幅回路と増幅回路をつなぐコンデンサーのことを Coupling ( カップリング ) コンデンサーといいます。たとえばツイードやブラウンフェースなどではギターのインプット・ジャックから入った信号を初段の増幅回路で増幅し、次の増幅段に送るために 0.02μF のカップリング・コンデンサーを介します。このカップリングコンデンサーの値は0.02μF にするのはあたりまえです。しかしどのコンデンサーにするかで音質が変化します。
「どのコンデンサー」という言葉の「どの」とは、

(1) コンデンサーに使われている誘電体による違い
  0.02μF で耐圧 400V 以上のコンデンサーに使われる誘電体の種類
     a)ポリエステル・フィルム b)ポリプロピレン・フィルム d) セラミックディスク

(2) メーカーとそのメーカーの品種による違い
  下の写真の左から
  イ)Jupiter RedAstron ロ)SOZO BlueMolded ハ)SOZO YellowMastered
  ニ)150M Mallory ホ)SBE OrangeDrop 716P ヘ) CDE OrangeDrop PS
  ト)セラミックディスク 3社 

オレンジドロップは現在3種類販売されています。
3種類の中で一番値段の高い ホ)716P の誘電体はポリプロピレンです。
最も安いヘ)PS の誘電体はポリエステルです。
フィルム・コンデンサーとしてはべらぼうに値段の高い
イ) Jupiter や ロ)SOZO はポリエステルです。
値段が高いから一概に良いというものでもなく使う場所により個性がでます。

 さて、どれにするのか、ああでもないこうでもないと思索したり、過去の経験に基づいて決めていく作業が楽しいのです。

一般的に言われているののは、誘電体がポリエステルの場合は50年代から60年代の初期のアンプの音がし、ポリプロピレンはそりよりも Hi-Fi であるということです。

セラミックディスクは以外と世間で知られていないようです。60年代に良く Fender で使われていました。特にブラウンフェースやブラックフェースには必ず、肝心かなめの一箇所には使われていました。これもどの部位に使うかによりその才能の発揮の仕方が異なります。
写真のコンデンサーはどれを使ってもそれなりの良い音がするものだけを集めています。
同じ値0.02μのコンデンサー各種

3種類に絞り込んだ後で、容量の実測も参考にし決定します。

【抵抗について】
抵抗もカーボン・コンポジット抵抗、カーボン・皮膜抵抗、金属皮膜抵抗、酸化金属皮膜抵抗、セラミックコンポジション抵抗とさまざまな種類があります。
用途つまりとどの部分に使うとよいのかが決まります。またメーカーによっても特性の差があります。
アンプの信号回路にはカーボン・コンポジットが良いと感じています。
カーボン皮膜抵抗はMarshall の回路には合います。しかし、 Fenderに使うと音が薄っぺらく迫力が少ないと感じます。
金属皮膜抵抗や酸化金属抵抗は Ceriatone や Boogie などには合います。Marshall や Fender では高域にキンキンと癖が出ると感じています。
しかし、これはあくまで信号回路に限ったことです。

電源回路になると事情が変わります。Fenderのヴィンテージではカーボンコンポジットの 1W が使われていた部分 ではセラミック抵抗がダントツに良い音がするように思います。 カーボン・コンポジットの 1W でも音質は良いものの、耐久性に問題が出ます。
電源回路では 金属抵抗や酸化金属でもそれなりの音質がキープでき、耐久性もカーボン・コンポジツトより勝ります。

信号回路に使うカーボン・コンポジット抵抗を使う上での注意点は使う場所と、その抵抗の値です。
5% から 10% のバラツキがあります。たとえば5% 誤差の 220KΩの抵抗を購入すると209KΩ~231KΩの間でバラツイテいます。ピッタリ 220KΩだけを使うのではありません。
回路のある場所には高めを使い、ある場所には低めを使うということで目指す音質により近づけることが可能です。私はカーボン・コンポジット抵抗を仕入れるたびに抵抗の値を元に選別し、保管しています。

カーボン・コンポジット抵抗の抵抗値を実測し選別しているところ
【2015 10/17 Updated】
上段: 購入した時点の抵抗の接続リード
下段: 酸化物を取り除いた接続リード  
抵抗を測定し、選別し、いよいよアンプの回路にハンダ付けするとき、そのままハンダ付けしていませんか? 上の写真の抵抗の足(リード)に注目してみてください。分かりやすいように拡大した写真が下の写真です。

抵抗のリードの拡大写真
購入した時点ではリード線に酸化物が付着しています。酸化物とは、リード線の金属の一部が酸化したもの。酸化とは金属の元素と酸素とが結合してできる不純物。酸素があるところでは必ず発生します。
ハンダ付けのときハンダにはフラックスが含まれています。このフラックスには酸化物を除去する働きがあります。しかし、完全に酸化物を除去するハンダ付けをマスターするには時間がかかります。マスターしていても、毎回毎回、アンプ一台で数百箇所に及ぶハンダ箇所全てに酸化物の残留はないと言い切れるでしょうか。
ハンダの時点でのフラックス溶剤で除去できるとはいえ、もしも酸化物が残留したままハンダ付けされてしまったらどうなるでしょうか。ハンダ付けの内部、つまり部品A の接点と部品Bの接点の間に酸化物が混入してしまうと、ハンダ付けした時点ではなんの問題もなく電気的な抵抗はゼロです。
しかし、経年変化、つまり時間が経過すると混入した酸化物のまわりに電気がよく流れる部分と流れにくい部分の差が広がり、最終的には発熱が大きくなり、ハンダ付け部分の接触不良を起こしてしまいます。

このような長期にわたる信頼性の観点から、私は念のために新品部品のリード線は全て酸化物を取り除いてからハンダ付けしています。
抵抗だけでなく、コンデンサーのリード線も、ポットの端子もジャックの端子も全てです。
写真の下側のリード線が酸化物除去の工程の後のリード線です。ピカピカにしています。

この工程は何百個という部品のリード線全てについて実施します。ギャンプスでのオーバーホールのリードタイムが長い要因のひとつなんです。( 言い訳がましくなり申し訳ありません )

【2015 10/15】
プリアンプ部分の回路を作りこみました。
色々考えた結果、初段のカップリング・コンデンサーは SOZO の BlueMolded 0.02μF に決定。
プリアンプからフェーズインバーターへのカップリング・コンデンサーはセラミックディスク 0.01μFに決定しました。
プリアンプ部分の回路作りこみ
次にフェーズインバーター回路を作りこみました。
下の写真の①の抵抗にフェーズインバーターのカソードがつながります。
写真の①と②の2つの抵抗の値でフェーズインバーターに使うプリ管の動作点が決まります。
当アンプはブラウンフェースの流れをくむため、12AX7 ( ECC83 ) をフェーズインバーターに使います。12AX7 に見合う抵抗値にしています。
フェーズインバーター回路の作りこみ
各々の回路に電源供給するフィルターキャップを組み込んで、回路ボードの完成です。
完成した Browny G3 の回路ボード
【2015 10/16】
インプット・ジャックのアッセンブリをしました。
「グラウンドループを排除するため、シャーシーとジャックのマイナス端子との接続を切り離したい」という設計上の思惑から、Switch Craft ではなく Cliff の白色を選択しました。
配線の中身は当ブログにあるインプット・ジャックについて ( Input Jack )を参照ください
インプット・ジャックのアッセンブリ
ポットは 2個使います。
ボリューム・ポット  x 1 : CTS 製
トーンポット          x 1 : プルスイッチ付き (Pull 時にトーンとして効きます。Push 時はバイパス)

左 Tone , 右 Volume
【2015 10/20】
回路ボードをシャーシーに取りつけた後、真空管ソケット、ポット、ジャックと配線をつなぎました。

回路ボード取りつけ
【2015 10/21】
 真空管を取りつけました。
左から
パワー管 :  Tung-sol リイシューの 6V6GT x2 (マッチドペア)
フェーズインバーター :  JJ の ECC83-MG ( Medium Gain ) x1
プリアンプ :  Tung-sol リイシューの 12AX7 x1

真空管装着
各部の電圧測定を行なったあと
バイアス調整を実施

バイアス調整中
AIW 製 WE 復刻版のスピーカーケーブルを使い、スピーカーケーブル・アッセンブリを製作

スピーカーケーブルのアッセンブリ中
スピーカーケーブルとシャーシーをキャビネットにインストールしました。

キャビネット組み込み
キャビネットにアンプを組み込んだ状態での重量は 10kg と650gでした。
片手で持ったときの感じは、ハードケースに入れたレスポールぐらいの感覚です。

重量計測
試奏テストを行いました。

試奏テスト中
【サウンド】音色は色にたとえるとブラウン。正にネーミング時の期待どおりです。
ブラックフェース回路は少し高域に特徴がありボリュームが 5ぐらいのときに使いづらいことがあります。それもあり今回 Browny G3 の開発に踏み切りました。思惑どおり、高域の癖はなく、暖かい音がします。中・低域のブーミーさもなく、タイトで、ブラウンフェースの欠点も克服しています。
それでいてサウンドの迫力も十分あります。ハイゲインで歪むのではなく、ヘッドルームが豊かで暖かい。 ( ボリューム・ポット位置およそ 10時の方向 )

10~12フレット近辺の1弦~4弦で CM7, A7, Dm7, G7 を弾いたときのコードの分離感がとてもきれいです。そうです。ブルースにもジャズにも使えるアンプということも念頭においていました。

【トーンコントロール】
Push ではバイパス状態。ちょうど 12時の方向にしたときと同じ音がします。
Pull して右に廻すと高域が増加しブライト感が増します。
Pull の状態で左に廻すと、わずかに高域を削っていきます。しかし、あまり極端にコモルことはありません。
トヘーンコントロールに使っているカップリング・コンデンサーの値は、ブラウンフェースのデラックスのそれとは少し変えています。ブラウンフェースのオリジナルは左にまわすとずいぶんとコモリ気味となり、私自身はあまり使わないからです。

【アッテネーター】
シャーシーのスピーカー端子の隣にスイッチをつけています。後ろから見て左にスイッチを倒した状態がノーマル。暖かく大きな音圧が得られます。
このスイッチを右に倒すと、アッテネーターが作動します。計算上はスピーカーに伝達されるパワーを 1/5 にまで下げます。
アッテネーターが作動した状態でボリュームとトーンを上げていきますと、歪んだ音がコントローラプルな状態で簡単に得られます。音圧もそこそこあり、聴感上は 1/2 ぐらいの音量に感じます。
ロックもいけます。
もちろん、ボリュームをあまりあげなければ、本来の目的であるご近所迷惑対策にも使えます。

 Eminence の Legend 1028K が予想以上にいい仕事しています。WE 復刻版ケーブルとの相性も抜群です。アルニコマグネットのよさである弦のニュアンスの再現性能がとてもよいです。重量の軽さとあいまって、これは今後使えると感じました。